ブダペストに暮らして20年以上。
身近にあるドナウ川といえば、遊覧船で国会議事堂やくさり橋などの優雅な景色を楽しむ、ヨーロッパ有数の大河というイメージでした。
ところが今回、夫が計画した1泊2日・貸し切りの小さな船の旅で、ドナウ川本流から分かれ、チェペル島(Csepel-sziget)の東側を流れる分流の水路を進むことになったのです。

葦の茂る岸辺や、のんびり釣りをする人の姿。大好きなインド・ケーララ州のバックウォーターや、学生時代に訪れたベトナムのメコン川の空気を思い出すエリアさえありました。

華やかな首都ブダペストのすぐ近くに、こんなにのんびりとした風景があったとは!と驚きました。
今回の記事では、観光客のほとんどいない、ローカルなドナウ川の雰囲気をご紹介します。
「あの雄大なドナウ川に、こんな一面もあるのか」と、気軽に読んで楽しんでいただけたら嬉しいです🎉

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本宮愛栞(もとみや あいか)
旧名「りり」でブログを書いてきました。
🇭🇺 ブダペスト在住21年。ハンガリー情報を中心に、旅先の情報も発信中。
🎒 世界50カ国以上を訪問。インドや暖かい国が大好きで、中欧周辺にも愛着あり。
🍀 ブダペストを拠点に、旅と暮らしを行き来するボヘミアンな生活を送っています。
「これ、誰かの役に立つかも」と思ったことや、「旅人の視点で見るハンガリーの情報」をブログで発信しています。
お問い合わせはお気軽にどうぞ。
免許のいらない小さな船

夫が借りたのは、オランダから運ばれてきたという小さな船でした。
オランダでは“小型ボートを借りて川を旅するスタイル”が一般的だそう。
「ブダペスト近郊でも、オランダのように船旅を楽しもう」というコンセプトで、ハンガリー人のオーナーさんが始めた船だそうです。

エンジン出力が小さく、船体も6メートルほどと小型のため、特別な免許がなくても操縦できるタイプ。
出発前に1時間ほどの講習を受ければ、そのまま旅に出られる気軽さが魅力です。
船内には大人2人と子ども1人が横になれる寝床があり、保冷ボックスと簡易トイレもついています。

去年はモンテネグロのプライベートボートツアーでコトル湾とアドリア海をめぐり、今年はエーゲ海クルーズの旅でテンダーボートを操縦する乗組員の姿を間近に見る体験などが重なってか、夫は「自分も船を操縦してみたい」と密かに思っていたようです。
免許なしで乗れる船を見つけて、大喜びでした。
数日後の週末に空きがあったので、すぐ予約を入れて旅が決まりました。
1日目|グバチ橋からドゥナヴァルシャーニまで

画像引用元:Google マップ(地図データ ©2026 Google)/矢印・ラベルは筆者加筆
私たちが旅したのは、ドナウの本流ではなく、ラーツケヴェ・ドナウ分流(Ráckevei-Duna)と呼ばれる細い枝分かれです。
ペスト側の南、20区のグバチ橋(Gubacsi híd)に船着場があります。

とはいえ、スタート地点の橋のたもとは、案外幅のあるエリア。
朝9時半すぎに出発したのですが、このあたりはカヌーの練習をする人やスタンドアップパドルボード(SUP)を楽しむ人でにぎわっていて、ぶつからないかと最初は少しひやひやしました。

けれど少し進むと、だんだん人影はまばらになり、水路は静かな雰囲気に変わっていきます。
岸辺には小さな家が立ち並び、ボートや小さな船を自宅の前の水辺に停めている家もあります。
ブダペスト近郊の水辺で、こんな暮らしを楽しむ人たちがいるのかと、新鮮な驚きでした。

釣り人もたくさんいました
木々や植物はたしかにハンガリーのものですが、水辺の静かな空気や、のんびり釣りをする人々の姿に、なぜかインド・ケーララ州のバックウォーターを思い出す場面もありました。

途中、ブダペスト20区から対岸のチェペル島へ渡るためのシンプルな渡し船があります。
運行の時間帯は航路をゆずるため一時停止が必要と聞いていましたが、今回はタイミングが重ならずにすみました。

この船旅では、白鳥の家族をたくさん見かけました。
ひな(幼鳥)はもう親とほぼ同じ大きさですが、羽の色がまだ薄くて、子どもだとわかります。

途中で通過したドゥナハラスティ(Dunaharaszti)は、夫の母方にゆかりのある町。
陸から見たことのある風景を船の上から眺めて、夫もうれしそうでした。
私たちもだんだん小さな船に慣れてきて、船の先頭に座ってみたりしながら、のびのびと過ごせました。


のんびり進むこと約3時間。
この日は、ドゥナヴァルシャーニ(Dunavarsány)という町の小さな宿を予約していました。
船で訪れることを前提に、桟橋付きの宿を探して見つけた場所です。

桟橋に停めるのは、まだ船に慣れない私たちにとってちょっとした大仕事。
それでも、ほかに船は泊まっておらず、桟橋も広かったので、なんとかなりました。


2日目の朝、娘がここでまさかのドボン…😅
宿はとてもシンプルながら清潔で、レストランで頼んだランチはボリュームたっぷりで、お腹がいっぱいに。
夫はこの後で6kmほど離れたシゲトチェープ(Szigetcsép)のビーチへ私たちを連れて行くつもりだったようですが、初めてのプライベート船旅に、家族全員が思ったよりくたびれていることに気が付きました。

そのため、この日は結局無理はせず、船の周りで過ごしたり、宿の遊び場で子どもを遊ばせたりして、のんびりと過ごしました。

2日目|シゲトチェープからグバチ橋まで

2日目は天気のいい日で、10時ごろに宿を出るつもりで準備をすすめました。
この日は午後に結婚式後のお祝いがあるそうで、桟橋には華やかな装飾。
式のあと、新郎新婦が船でこちらの宿を訪れる段取りになっているそうで、楽しそうなスケジュールだなと思いました。
ちなみに、目を離した隙に、4歳の娘が桟橋からまさかのドボン💦
水深は浅かったので大事にはいたりませんでしたが、こんなこともあるのかとびっくりしました。
部屋に戻って着替えてから、気を取り直して出発しました。

夫はここから18kmほど南にある水辺の町ラーツケヴェ(Ráckeve)へ足を延ばしたいようでしたが、そこからブダペストへ戻るには4時間はかかる計算です。
子どもには少し長旅かと思い、今回は諦めて、前日に寄るつもりだったシゲトチェープのビーチへ向かってみることに。

シゲトチェープまでの水路は川の中央にも葦が多く、この旅でもとくに雰囲気のあるエリアで気に入りました。
悠々と空をゆく白鷺、白鳥の家族、青く広がる空を眺めながらのんびりとすすみ、岸辺の家や船の風景も美しく、見飽きません。


シゲトチェープのビーチは船のオーナーさんがおすすめの場所なのですが、中洲の島にある隠れ家っぽい場所で、口コミでも人気があります。
ただし、船をつける桟橋がなく、裸足で降りて水際に停めるしかなさそうです。
停泊が大変そうだったのと、泳ぐつもりでもなかったので、船から空気感だけ味わって、またの機会にとUターンしました。

いくつかの船が画面右側に停泊しています
お昼は、ドゥナハラスティにある「Stég Placc」という川辺のレストランへ寄ることに決めていました。
その少し手前で、強風にはばまれて前に進めなくなった、カヌーを漕ぐカップルに遭遇。
「途中まで引っ張ってほしい」と頼まれ、ロープをつないで、カヌー乗り場まで5分ほど一緒に旅するという、船ならではの体験もありました。

その後、レストランの近くに着いたものの、桟橋が思っていたよりも小さく、夫は横づけをちょっと渋っていましたが、私がどうしても寄りたくてなんとか説得。
1回目はうまくいきませんでしたが、2回目でなんとか横づけでき、夫に感謝です。

開放的なハンガリーらしいお店で、ハンバーガーなどの軽食が楽しめます。
遊び場もあって、子どもたちも大喜びでした。


スタンドアップパドルボード(SUP)で、私たちのようにドナウ川からやってくるお客さんが多いことにも驚きました。
ワンちゃんを乗せて進む人もいて、みなさん慣れた様子。
こうやって、夏場はドナウ川の分流での休みを満喫する人々を垣間見ることができてよかったです。

そのあと、船を返すグバチ橋までは約1時間。船首からの最後の景色を楽しみました。
あっという間の、けれど濃い1泊2日を過ごすことができ大満足です。

もうひとつのドナウ

私が長年暮らしているブダペストから見るドナウ川は、岸辺に壮大な建物が並び、大きな橋がいくつもかかる大河です。
でも、少し南へ下るだけで、そこには葦の揺れる静かな水路と、水辺に根ざした暮らしがありました。
同じ「ドナウ」でも、まるで別の国に迷い込んだような時間です。
ガイドブックには載らない、ブダペストのすぐ隣の“もうひとつのドナウ”。
長くこの国に暮らしていても、まだ知らない景色に出会えたことが、何よりの収穫でした。
いつかまた、あの静かな水路を旅してみたいと思います。
今回の旅で、インド・ケーララ州のバックウォーターにある大好きな宿を思い出しました。ぜひこちらもご覧ください。


