ブダペストのペスト側の中心、7区のユダヤ人街の真ん中に、Gozsdu Udvar(ゴジュドゥ・ウドヴァル=「ゴジュドゥの中庭」の意)というユニークな一角があります。
Király通りとDob通りを結ぶ、約250メートルの細長い通路。
20世紀はじめに建てられたこの建物群は、7棟の建物と6つの小さな中庭で構成され、現在はレストランやバーがずらりと並びます。

金〜月曜日の日中は手作り雑貨やヴィンテージ品などのマーケットが開かれ、夜はナイトスポットとして賑わい、植物や花・ボヘミアンな装飾で飾られた自由な空気感が魅力です。

騎士像が持つ盾に、マーケットの営業時間が記されています
華やかな姿のGozsdu Udvarですが、戦時中はゲットーになり、社会主義時代には荒廃し…と、激動の歴史をくぐり抜けて今の姿があります。
今回は、この場所の歴史から、現地の様子、週末マーケット、そしてレストランのグヤーシュスープのレビューまで、20年暮らす在住者の目線でまとめてご紹介します。
「泊まる場所」として考えている方への、正直な注意点も最後に書きました。

Király通りから数えて2つ目の中庭では、後ほど紹介する社会主義時代の勲章などのグッズが、マーケット営業日に購入できます
気軽に通り抜けできるエリアなので、近くに寄った方はぜひこの記事を参考に歩いてみてくださいね🎉
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本宮愛栞(もとみや あいか)
旧名「りり」でブログを書いてきました。
🇭🇺 ブダペスト在住20年。ハンガリー情報を中心に、旅先の情報も発信中。
🎒 世界50カ国以上を訪問。インドや暖かい国が大好きで、中欧周辺にも愛着あり。
🍀 ブダペストを拠点に、旅と暮らしを行き来するボヘミアンな生活を送っています。
「これ、誰かの役に立つかも」と思ったことや、「旅人の視点で見るハンガリーの情報」をブログで発信しています。
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Gozsdu Udvarの歴史

Király通りの入り口にありますが、現在は装飾の後ろに隠れてちょっと見つけにくいです
Gozsdu Udvarの名前の由来は、ナジヴァーラド(現ルーマニアのオラデア)出身で、ペストへ越してきた裕福なアロマン人(バルカン系の商業民族)の弁護士、ゴジュドゥ・マノー(Gozsdu Manó/ルーマニア語:Emanoil Gojdu)です。
彼は全財産を慈善に遺し、その遺志を継いでゴジュドゥ財団が設立されました。
財団はルーマニア系(正教徒)の若者の教育を支えるためのもので、彼が所有していたKirály通りの土地に賃貸住宅を建て、その家賃収入で奨学金を支払っていました。
設計を手がけたのは、セーチェーニ温泉の基本設計なども担当した建築家チグレル・ジューズー(Czigler Győző)。
チグレルは「どの住戸も対等で、中庭からほぼ等しく光が入る」集合住宅を目指し、棟を分けて中庭を挟む“通り抜け式”を採用しました。

細長いエリアに、6つの中庭があることがわかります
1901〜02年頃に建物群は完成。
7棟の建物と6つの中庭からなり、上層階には主に近隣のユダヤ系の人々が暮らし、地上階には金細工師や彫金師などの店が軒を連ねる、活気ある場所だったといいます。
当時この界隈は、人口の多くをユダヤ系が占める地区でもありました。
だからこそ、この中庭は第二次大戦中の1944〜45年に、ゲットーの一部に組み込まれてしまいました。
戦後に国有化されると、かつての職人や商人の賑わいは消え、建物は手入れされないまま老朽化していきました。
社会主義が終わる頃には住人もまばらで、人けのない、どこか不気味な廃墟同然の姿になっていたようです。
90年代末に民間投資家へ売却されると、住宅・オフィス・娯楽施設という混合用途の再開発計画が立てられ、再生工事は2008年に完了しました。

両脇にはレストランやバーが並びます
完成後のGozsdu Udvarのことを覚えていますが、最初の数年は路面店のテナントはほとんど入っていませんでした。
当時の印象は「比較的がらんとした寂しい場所で、その上のアパートはモダンでおしゃれ」というもの。
その後、少しずつ賑やかになっていき、現在はレストランやバーが立ち並び、昼から夜にかけて多くの人で賑わうブダペストでも人気のスポットになっています。
Gozsdu Udvarがあるこの一帯は、ブダペスト7区のユダヤ人街。壮麗なシナゴーグや、ホロコーストの犠牲者を悼む記念碑など、この地区が歩んできた歴史については、こちらで詳しく紹介しています。

現在の雰囲気と週末のマーケット

十字路になっていて、四方向から出入りできます
細長い作りのGozsdu Udvarにはいくつかの方向からアクセスできます。
一番華やかなのはKirály通りの入り口で、色とりどりの花や蝶で飾られた、写真映えするアーチが迎えてくれます。
まっすぐ6つの中庭を通り抜けると、反対側のDob通りへ。
Király通りから3つめの中庭は十字路になっていて、それぞれ左右へ抜けることもできます。

通路はお店ごとに個性的なインテリアと、季節で移り変わる装飾で彩られていて、歩くだけでも楽しい空間です。

左の画像は2020年のハロウィンの頃
午前中は比較的静かですが、レストランやカフェで朝食やブランチを楽しむ人の姿もちらほら。
お昼を過ぎると、お目当てのレストランへ向かう人で少しずつ賑わいはじめます。

お昼以降は混雑していますが、平日の朝10時頃は空いていました
特に活気づくのは、ハンドメイド雑貨などのマーケットが開かれる金曜から月曜までの4日間。
10:00〜17:00の間、中庭や通路に露店が並び、手作りのアクセサリーや雑貨など、ありきたりなお土産とはひと味違う品が見つかります。


露店は曜日によって少しずつ異なるようで、一番盛り上がるのは土日です。
クリスマスの前は、例年毎日マーケットが開かれています。
なかには、社会主義時代のバッジや勲章といったレトログッズを扱うお店も数件。
郊外の大規模な蚤の市まで足を運ばなくても、中心部でこうした“掘り出し物”に出会えるのは、Gozsdu Udvarならではです。

手作りのアクセサリーから社会主義時代のヴィンテージグッズまで、宝探しのように掘り出し物を探すのも楽しいもの。
ショッピングが好きな方は、マーケットの開かれている金曜日〜月曜日の間にぜひお出かけになってみてください。

本格的な蚤の市が好きな方は、郊外のエチェリ市場が有名です。手軽なGozsdu Udvarとはまた違うカオスな楽しさがあります。

名物グヤーシュを実食!Mama Goulash – Schnitzel House

Gozsdu Udvar周辺で、Google Mapsのレビュー評価が高いレストランがMama Goulash – Schnitzel House(ママ・グヤーシュ・シュニッツェル・ハウス)。
「おばあちゃんの家庭料理」を打ち出したお店で、今回の記事を書いている途中で気になったので、家族を連れて初めて出かけてみました。
人気店なので、夕方5時という早い時間に行ったのですが、すでに結構テーブルが埋まっていてびっくり。
テーブル予約はできず、週末や夜は行列になることも多いようです。
入り口近くの、店内のテーブル席に通してもらいました。

メニューはとてもシンプルで、店名にもなっているグヤーシュやシュニッツェルなど数点のみ。
ブダペストのレストランとしてはお値段もお手頃で、気軽に入ってパパッと食べたい時にいい感じです。
名物は店名にもなっているグヤーシュ。
追加料金1,000フォリントで、パンの器に入れてもらうこともできます。
チキンのシュニッツェルとフライドポテト、ハンガリー料理定番のチキンパプリカーシュもオーダーしてみました。

(右)チキンパプリカーシュ、2,700フォリント
グヤーシュとチキンパプリカーシュは、ドリンクが届く前にもう運ばれてきました。お店の回転もこれならとっても速そう。
そして、どの料理もボリュームたっぷり。
パンの器に入ったグヤーシュの迫力はもちろん、お皿いっぱいに広がるシンプルなシュニッツェルも、潔さがかえって印象に残ります。

グヤーシュのお肉や野菜はとても柔らかく、食べやすい味付けでした。
パンに入れてもらったため、水分をだいぶもっていかれて、シチューのような感じになっていたのはご愛嬌。
ハンガリー人の夫としては、グヤーシュもチキンパプリカーシュも、もう少しパプリカ味が効いてたら完璧だと言っていましたが、おいしいとOKサインがでました。
テーブルを担当してくれた数名は、ハンガリー語は通じない外国人スタッフばかりで、お客さんも旅行者が中心で、ハンガリーなのにインターナショナルに感じる空間でした。
接客は評判の通りよかったです。

外では音楽が流れ、目の前の通路を人々が行き交うので、落ち着いた感じではないですが、そのおかげで子どもがちょっとうるさくしても全く気にならずに助かりました。
肩肘張らずにグヤーシュやチキンパプリカーシュを味見してみたい人は、このレストランをチェックしてみてください。
そもそもグヤーシュってどんな食べ物?という方は、こちらの記事もどうぞ。

| 住所 | Budapest, Dob u. 16, 1072 ※Dob通りの入り口の近くです |
| アクセス | Deák Ferenc tér駅から徒歩7〜8分 Astoria駅から徒歩4〜5分 |
| 営業時間 | 12:00〜23:00 ※テーブル予約はできません |
| 定休日 | 普段は定休日なし ただし、クリスマスなどの祝日は、公式ウェブサイトを要確認 |
| 公式ウェブサイト | https://www.mamaschnitzel.com/ |
| メニュー | https://www.mamaschnitzel.com/menus |
Gozsdu Udvarで泊まるなら知っておきたい注意点

Gozsdu Udvarの上層階は住宅になっていて、民泊やホテルとしても営業しています。
「歴史ある中庭のど真ん中に泊まれる」と聞くと魅力的ですが、このエリアはブダペスト屈指のパーティー地区。
深夜までレストランのテラス席のお客さんの声や、音楽が聞こえてくる可能性がとても高いです。
特に週末、夏休みや年末年始などの観光シーズンは、騒がしいことが確実です。

画像引用元:partybudapest.hu
とはいえ、建物の棟や階、部屋の向きによって静かな場合もあるようです。
このエリアに宿泊したい場合は、必ずGoogle Mapsやホテル予約サイトのレビューを読み込んで、騒音に関するコメントを確認してください。
夜の街が好きな人であれば、パーっと楽しんだ後に宿へ戻ってすぐ眠れるという立地は魅力的だと思います。
Gozsdu Udvarのある7区を含め、ブダペストで「泊まっていいエリア・避けたいエリア」を地図つきで解説しています。宿選びの前にぜひご覧ください。

Gozsdu Udvarのアクセス・基本情報

| 住所 | Budapest, Király u. 13 – Dob u. 16 |
| アクセス | Deák Ferenc tér駅から徒歩4〜5分(Király通り入り口) Astoria駅から徒歩5〜6分(Dob通り入り口) |
| 週末マーケット | 金〜月 10:00〜17:00頃 クリスマス前など、毎日営業の期間もあり |
| 公式ウェブサイト | https://www.gozsduudvar.hu/en |
Gozsdu Udvarへは、Deák Ferenc tér駅(Király通り側)またはAstoria駅(Dob通り側)から徒歩数分の距離で、どちらの入口からでも通り抜けられます。
Madách Imre通りやHolló通りの中央あたりからもアクセス可能です。
Király通りの入口から徒歩1分、たくさんの植物と吹き抜けが印象的なレストラン「Twentysix」もユニークな場所です!

Gozsdu Udvar周辺は朝食・ブランチスポットも充実しています。Dob通りの入り口から1分の「Cirkusz」に訪れた時のレポートはこちらからどうぞ!

まとめ|Gozsdu Udvarの楽しみ方

朝の静かな時間帯の様子
Gozsdu Udvarは、ひとりの慈善家の遺志から生まれ、ゲットーの時代や荒廃を経て、今は観光客が集うナイトスポットになった場所です。
昼は歴史ある建築やレストランを、週末はマーケットでの買い物を、夜はテラス席やバーの賑わいを。
時間帯によって、いろいろな楽しみ方ができます。
ペスト中心部を訪れたら、ぜひ気軽に立ち寄ってみてくださいね。
Gozsdu Udvarと同じユダヤ人街にある「シンプラ・ケルト(Szimpla Kert)」は、ブダペストで最も有名な廃墟バー。
雑多で自由な雰囲気はGozsdu Udvarにも似ていて、シンプラ・ケルトには、廃墟から生まれた空間ならではの迫力があります。


